「おじさん。人間は何のために生きてんのかな」。おいの満男に問われた寅さんはこんなふうに答える。「ああ、生まれてきてよかったなって思うことがなんべんかあるじゃない。そのために人間生きてんじゃないのか」(映画「男はつらいよ 寅次郎物語」)▼毎日が愉快なことばかりではない。しんどいことだらけだが、たまにうれしいことも。ささやかな「明かり」を励みに生きる。寅さんの言葉には、そんな意味が込められている▼その、いつ訪れるかも分からない「明かり」は支えにならなかったのかもしれない。青森県で先月、中2の女子生徒が自殺した▼「ストレスでもう生きていけそうにない」。スマホにそう記されていた。同県ではこの少し前に、中1男子も自殺している。いずれもいじめが理由らしい。楽しいことが待つ10代前半。言葉もない▼2学期が始まっている。人知れずつらい思いをしている子供たちにこの言葉を贈りたい。「これでいいのだ」。漫画家の赤塚不二夫さんがバカボンのパパに語らせたフレーズだ▼頑張って、頑張って、それでもどうしようもない時。「いまのままでいいのだ」「自分は自分でいいのだ」とつぶやいてみてはどうか。決して居直りでもなければ、逃げでもない。無理して学校に行かなくていいし、成績だって悪くてもいい。そう思えれば、日々の暮らしに違った角度から光が差すはずだ。【北海道新聞】卓上四季 2016.9.03.