たまに寄る立ち食いそばの店に、魚肉の「ソーセージ天」がある。夏は揚げたてより、冷めていた方が冷たいそばには合う。別の食堂でも人気の一品で、こちらは熱々がビールにぴったりだ ▼日本缶詰びん詰レトルト食品協会によると、魚肉を使ってハムやソーセージを作る試みは戦前からあった。戦後、愛媛県の会社が近海のアジ類を原料に、本格的に生産を始めた。その後、大手水産会社もマグロなどを使って相次ぎ参入した ▼1954年、ビキニ環礁で米国が行った核実験で遠洋マグロ漁船が被ばくした。その風評でマグロの価格が下落、魚肉ハム・ソーセージの原料コストも低下して、製品がどんどん広がった ▼やがてマグロが値上がりすると、クジラが原料に使われた時期もある。捕鯨が難しい時代に入ると、スケトウダラの活躍である。70年代、防腐剤の発がん性が問題になり、高温高圧殺菌などが導入された。ソーセージ年表の裏に時代の激変が透けて見える ▼生産量は70年代がピークで年間20万トン近くに達した。1人暮らしの学生時代、朝に夕に世話になった。その後、生産は大幅に減ったが、ここ数年は5万トン台で横ばいだ。低カロリーで低脂肪。今や「ヘルシー食品」の一つである ▼ジャーナリストの吉田光宏(みつひろ)さんが月刊誌に寄せた記事を読んでいたら、前述の愛媛の会社は、富山のシロエビ、島根のノドグロなど「ご当地ソーセージ」も製造するそうだ。新潟らしい魚肉ソーセージも食べたい-。ビール党の夢想である【新潟日報】日報抄 2017.6.18.