七日の日は、なんとなくさびしい。せめてきょう一日と思っているのに、午前中から、ぱたぱ
たと、まことに事務的に、職人たちが門松を取り去ってしまう。店先の蓬萊飾りもたちまちにな
くなり、部屋部屋の、うらじろの輪飾りも、全部はずされてしまう。「お正月」の気分は一掃さ
れて、いやでもおうでも、これからまた、長い、平常の、ふだんの生活がはじまるのだ。
ななくさ なずな
唐土の鳥と 日本の鳥と
わたらぬ先に
ストトンのトン
そうして、七日の朝の膳にはななくさがゆが出る。わたしのうちなどでは、別に、植物類をた
きこみもしなかった。ただ、さとうで味をつけた、おかゆであった。あまりおいしくもないので、
大抵いっぱいでごめんをこうむった。そしてその翌日から学校が始まるのであった。
転載【私の食物誌】池田弥三郎 一月七日 ななくさ